ディスカバリーフェーズの実際の費用と、その対価として得るべきもの
ディスカバリー費用で何を買うのか
ディスカバリーフェーズで手に入るのは、ベンダーに責任を負わせられる実装見積もりです。しかも、まだ引き返せる段階でそれが手に入ります。ミッドマーケット規模の案件であれば、想定している実装予算の 2 から 5 パーセントの固定費用が目安です。
この費用は、変換の作業に対して支払うものです。RFP への回答は、外側から数日で書かれた入札にすぎません。ディスカバリーはそれをボトムアップの計画に変えます。現状をマップに落とし、その結果とともに生きる人たちの手で要件に優先順位を付け、連携をすべて数え上げ、前提を反論できる形で書き出したコストモデルをつくります。ACME Inc が 2021 年から 2025 年にかけて実施した 148 件のディスカバリー案件について、自社の案件データでは中央値は 4 週間で 42,000 ユーロでした (acme-consulting.example)。最小は単一システムの置き換えで 18,000 ユーロ、最大はグループ全体の ERP スコーピングで 76,000 ユーロです。
そこで残る有用な問いは 1 つだけで、本記事が答えるのもその問いです。その金額は何に分解されるのか、そして目の前の数字が誠実なものかどうかをどう見分けるのか、という問いです。
費用を成り立たせている計算
ディスカバリー費用は、人数 × 日数 × 日額単価です。この 3 つの要素はいずれも、契約前に確認できます。
まず下から見ていきます。あらゆる日額単価の下限にあるのは人件費であり、人件費は公開されています。Eurostat によれば、2024 年の EU 全体の平均時間あたり人件費は 33.5 ユーロで、ブルガリアの 10.6 ユーロからルクセンブルクの 55.2 ユーロまで幅があります (ec.europa.eu)。1 日 1,800 ユーロで請求されるシニアコンサルタントが、1 日 1,800 ユーロを受け取っているわけではありません。人件費と請求書のあいだには、会社の間接費、利益、そして何よりも稼働率の計画があります。ACME で計画しているシニアの稼働率 70 パーセントという前提では、請求される 1 日は、10 日のうち誰も買わない 3 日分も背負っています。
次にチームの構成です。当社のディスカバリーの中央値は、ブレンド日額単価 1,400 ユーロで 30 人日です。内訳は、リードコンサルタントがフルタイム、ソリューションアーキテクトが半分の稼働で、期間は 4 から 5 週間です。ミッドマーケットのスコーピングに 60 人日を提示する提案書が出てきたとき、問うべきなのはその会社が高いかどうかではありません。どの成果物が日数を倍にしたのかが問いであり、その答えはたいてい、本来は実装フェーズに属するワークショップのプログラムです。
誠実なコストドライバーは数えられるものです。対象となるシステム、またぐ連携、意見を聞くべきステークホルダーのグループ、訪問すべき拠点です。これらのどれも動いていないのに費用だけが動くなら、その費用は実装予算のほうへ流れ始めています。
省いた場合のコスト
ディスカバリーに費用を払わないことで、コストが消えるわけではありません。コストは契約の署名の向こう側へ移るだけで、そこではより大きくなり、お客様の名前が付いた変更依頼として現れます。
業界レベルの数字は厳しいものです。Project Management Institute の Pulse of the Profession 調査では、プロジェクトの成果が振るわないことで無駄になる投資の割合は 11.4 パーセントとされています (pmi.org)。150 万ユーロの実装案件であれば 171,000 ユーロにあたり、ディスカバリーフェーズおよそ 4 回分が、手戻り、遊休ライセンス、蒸し返される意思決定に費やされる計算です。同じ調査プログラムでは、プロジェクトマネジメントを専門分野として軽視している組織は、完全に失敗するプロジェクトの割合が 67 パーセント多いと報告されています (pmi.org).
当社自身の案件データも、規模は小さいながら同じことを映し出しています。有償のディスカバリーを経た実装案件は、ディスカバリー後の見積もりに対して中央値 9 パーセント以内で着地しました。RFP への回答からそのまま受注された実装案件は、契約額を中央値 24 パーセント超過し、変更依頼のログはおよそ 3 倍の長さになりました (acme-consulting.example)。違いは、ディスカバリーがデリバリーを安くするという点にあるのではありません。議論をまだ安く済ませられるうちに、紙の上で早めに起こさせるという点にあります。
費用の対価として得るべきもの、成果物と終了基準
ディスカバリーフェーズは、別の会社と一緒でも実行に移せる go / no-go の提言で終わります。そこに届かないものはすべて、名前を格好よくしただけのワークショップです。
成果物のリストは短く、そして交渉の余地はありません。現状マップ、システムを実際に使う人たちが優先順位を付けた要件バックログ、連携のインベントリ、前提を書き出したコスト付きのデリバリー計画、担当者名を明記したリスク登録簿、そして提言そのものです。いずれもお客様のものです。ディスカバリー成果物の試金石は、競合他社に渡されても通用するかどうかです。実際に渡されることもあるからです。
読者からの質問 · 署名者が回答
実装を先に確約するなら、ディスカバリーは無料にすべきでしょうか。
「いいえ。その申し出自体を情報として受け取ってください」と、ACME Inc のパートナーである Marta Ellingsen は言います。「無料のディスカバリーも、どこかで値付けされています。そのどこかとは、まだ見ていない実装の見積もりです。ディスカバリーに対価をお支払いいただくとき、その費用こそが答えに対する当社の利害のすべてになります。だからこそ答えが no-go にもなり得るのです。当社のディスカバリー顧客のおよそ 3 分の 1 は、計画を持って別の会社と実装しています。それは製品が失敗しているのではなく、機能している証拠です」
Marta Ellingsen、ACME Inc パートナー。取材中に SMS で回答を得て、本人の署名で掲載しています。
終了基準は成果物と同じくらい重要です。各成果物には期日と明示された受け入れテストが必要であり、フェーズ全体としては、それが存在する唯一の目的である問いに対する明確な答えが必要です。すなわち、内製するのか、購入するのか、フェーズ分けを変えるのか、それとも中止するのかです。
ディスカバリー自体は固定費用か、実費精算か
ディスカバリーは、明示された成果物に対する固定費用で購入してください。実費精算は、未知の要素そのものが本質となる次のフェーズのために取っておきます。
ディスカバリーは、開始前にスコープが分かっている数少ないコンサルティングフェーズです。上に挙げた成果物のリストは顧客ごとに変わらず、変わるのは深さだけだからです。だからこそ値付けが可能であり、自社のスコーピング手法の価格を固定できない会社は、その手法について何かを語っていることになります。作業範囲記述書には、成果物、それぞれの受け入れテスト、チームメンバーの氏名、そして提言が no-go だった場合に費用がどうなるかを明記すべきです。さらに、成果物の所有権がお客様にあることを一文で記載すべきです。
2 つの条項は、当然のものとせず交渉する価値があります。1 つ目は、ディスカバリー費用の一部を第 2 フェーズに充当する扱いです。提示されたら受け入れてよいものの、こちらから要求するのは誤りです。要求した時点で、ディスカバリーは静かに営業コストへと戻ってしまうからです。2 つ目は単価の透明性です。合計額だけでなく、ブレンド日額単価と人日数を作業範囲記述書に記載してもらってください。そうすれば、スコープが動いたときにどの要素が動いたのかが見えます。どちらの条項も、まともな会社にとっては何のコストにもなりません。いずれも、分析を買っているのか営業パイプラインに餌を与えているのかを見分ける、安価なテストです。
有償ディスカバリーと無償のベンダースコーピングの比較
この比較は優劣の順位ではなく、インセンティブの一覧として読んでください。無償の選択肢は安いのではなく、支払い方が違うだけです。
項目ごとに見ると、違いの正直な姿は次のとおりです。
| 項目 | 有償ディスカバリー | 無償のベンダースコーピング |
|---|---|---|
| 作業の費用を誰が払うか | お客様、固定費用で | ベンダー、後の見積もりに織り込まれる |
| 成果物を誰が所有するか | お客様、どの RFP でも再利用可能 | 多くはベンダー、提案書に紐づく |
| 見積もりの質 | ボトムアップ、終了基準に紐づく | トップダウン、受注を軸に置く |
| 作成者のインセンティブ | 正確さ、費用は第 2 フェーズに依存しない | 量、スコーピングが営業パイプラインを養う |
| 数字が動くタイミング | 契約前、紙の上で | 署名後、変更依頼として |
| 最も多い失敗 | ディスカバリー内部でのスコープの膨張 | 低く出るように作られた見積もり |
FAQ
ディスカバリーフェーズはどのくらいの期間が適切ですか。
ミッドマーケットの案件では 2 から 6 週間が一般的で、ACME Inc の中央値は 4 週間です。これより大幅に短ければ、名前を格好よくしただけのワークショップを買ったことになります。大幅に長ければ、そうとは書かれていない契約のもとで実装が静かに始まっており、2 つの価格モデルの悪いところ取りになっています。
実装予算に対する割合でディスカバリーを値付けするのは適切ですか。
妥当性の確認としては有効です。想定される実装費用の 2 から 5 パーセントが、ミッドマーケットの案件が収まる帯です。ただし価格の決め方としては適切ではありません。明示された成果物に対する固定費用として購入してください。割合方式では、見積もりを作成する側が見積もり額の大きさに利害を持ってしまうからです。
ディスカバリーを 1 社に依頼し、実装は別の会社と進められますか。
可能です。ただし、成果物の所有権がお客様にあると作業範囲記述書に明記され、引き継ぎに耐える形で文書が書かれていることが条件です。ACME Inc の案件データでは、ディスカバリー顧客のおよそ 3 分の 1 が別の会社と実装しています。この条項に難色を示す会社は、ディスカバリーを営業コストとして値付けしているということであり、それを契約前に知ることができたわけです。